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今春の凍霜害について(今後の対応など)

今春の凍霜害について(今後の対応など)

プログレスファームの細野善寛です。

今回は凍霜害記事の第二弾「今後の対応」として、今後同様の気候となった場合、どのように被害を未然に防止(軽減)するのかを考えてみたいと思います。技術的な話が多くなりそうですが、備忘のためにも書いておきたいと思います。

第一弾はこちらからどうぞ「今春の凍霜害について(振り返り)」

(サムネイルの画像は4/26 18時 千曲川河川敷にて。この翌朝にも霜がおりました。この綺麗な空を見ながら「明日は霜が降りるかな…」と思っていました。)



目次

1 凍霜害に遭わないようにする方法

(1)植物に対し、凍結を抑止する資材を事前に散布する
(2)気温低下中に水を散布し、凍る際の潜熱により温度低下を防止する(散水氷結法)
(3)日中に園地の地温を上昇させ、霜が降りにくい状態とする
(4)上空数メートルの比較的温かい空気を地表に送り込むことで地表の温度を上げる
(5)気温低下中に焚火を行い、地表の温度を上げる(燃焼法)

2 凍霜害に遭ってもダメージを少なくする方法

(1)凍霜害の心配がなくなるまで摘蕾や摘花を最低限にとどめる
(2)凍霜害に遭った後、何度も人工授粉する

3 現時点での結実の見通し



1 凍霜害に遭わないようにする方法

今シーズンは(1)と(3)を行いましたが、来シーズンは(5)も追加したいと考えています。

(1)植物に対し、凍結を抑止する資材を事前に散布する

凍結を防止する資材は自分が知る限り以下のようなものがあり、これらは凍霜害が予想される数日前にスピードスプレーヤ(自走式の動力噴霧機)で散布するものです。

  • 植物体に空気の層をまとわせて温度低下を防ぐタイプ(商品名:霜ガード)
  • 過冷却を促進して凍結温度を下げるタイプ(商品名:フロストバスター)
  • 植物の細胞液濃度を高めて凝固点を下げるタイプ(商品名:アイスバリア、トレハ物語など)

これらは簡単に散布できますが、資材によっては価格が高いため、何度も襲来する低温のたびに散布するのは現実的ではないと考えています(サブスクのように何度利用しても同価格であればいいのですが)。

当園では、今シーズンは上記3つ目の「植物の細胞液濃度を高めて凝固点を下げるタイプ」の資材を用いました。効果検証はこれからですが、植物体に取り込まれて効果が期待できる性質のものなので、展葉したばかりの葉や咲いたばかりの花を守る効果は低いかもしれません。


(2)気温低下中に水を散布し、凍る際の潜熱により温度低下を防止する(散水氷結法)

散水した水を植物体にまとわせて凍らせ、0℃以下になることを抑止する方法です。

この方法を導入する難しさとして、大量の水が必要となるため、水源として周囲に井戸や用水を必要とすること、散水システム(ポンプ+ホース+果樹高以上の場所からのスプリンクラー)が必要となることがあげられます。

効果のほどは分かりませんが、多数の園地を管理する場合の設置・運用は現実的ではないように思います。


(3)日中に園地の地温を上昇させ、霜が降りにくい状態とする

次のような地温を上げる(または下げない)対応により、そもそも園地に霜が降りにくい状態にする方法です。

  • 敷き藁をしない
  • 下草を刈る
  • 日中の灌水により土壌水分を増やす

この方法は、地面のごく表面にアプローチするものであり、当園のように棚作でない場合、今回のような著しい気温低下には効果が薄いように思いました。

むしろ、地温を上げようとするとことがかえって果樹の生育を促進させてしまう可能性があり、特に発芽直前に地温の上昇を狙うことは霜害を助長させる可能性があると思います。

実際に当園では、気温低下の数日前に霜害防止を狙って草刈りをしましたが、結果的に発芽を促進させ霜害の被害を大きくしてしまったと考えています(春の草刈りは果樹の生育ステージと霜害の危険性をよく見極めて実施することが大切と知りました)。


(4)上空数メートルの比較的温かい空気を地表に送り込むことで地表の温度を上げる

園地に防霜ファン(茶畑で見かける大型扇風機のようなもの)を設置し、気温低下が見込まれる際にファンを稼働させ、地表の温度を上げる方法です。

この方法は上空数メートルの気温が比較的高いことが前提であり、今回のような著しい気温低下では効果が薄かったようです(いつもの遅霜なら大丈夫だそうですが)。

今回のような凍霜害に効果が薄かったうえに設置費用(一機数十万円)やランニングコスト(年間数万円)がかかるようでは、新設するのは難しそうです(まして、当園は基本的に借地で耕作しているので構造物は投資しづらいです)。


(5)気温低下中に焚火を行い、地表の温度を上げる(燃焼法)

果樹の下で小さい火をたくさん焚くという方法です。

大きい火は果樹を傷めてしまう可能性があるだけでなく、大きな空気の流れを作ってしまい、むしろ冷気を引き込む可能性があるため、あくまで小さい火を数多くというのがポイントのようです。

燃焼資材として木材チップを樹脂で固めた暖炉用の高価なもの(商品名:デュラフレーム)、オガクズや剪定枝、灯油があるようです(古くは廃タイヤまで燃やしていたそうです)。コストパフォーマンスを考えると灯油(ペール缶にキッチンペーパーを入れて点火)が一番良さそうです。

ただ、夜中明け方は湿度が高く類焼の危険性は低いとはいえ、、火を扱うので見回りができる範囲の園地に限られそうです。

燃焼法の様子。ご近所のぶどう畑にて(4/27 4時)


2 凍霜害に遭ってもダメージを少なくする方法

(1)凍霜害の心配がなくなるまで摘蕾や摘花を最低限にとどめる

果樹によって異なりますが、一部の例外を除いて(栗など)、良品や大玉を生産するため、もともと樹についている蕾や花の数に対して果実を段階的に絞り込む作業(摘蕾や摘花、摘果といった作業)を行なっています。

桃の作業では以下のような流れとなりますが、最近では「早期着果調節」の効果が明らかになっていて、結実前にしっかりと摘蕾や摘花を行うことが作業平準化や作業効率、大玉生産のために有効とされています。

  • 摘蕾 → 摘花 →(結実)→ 予備摘果 → 本摘果 → 仕上げ摘果 → 袋がけ → 除袋 → 収穫

しかし、今回、この(結実)の前段階で凍霜害に遭ってしまい、残る果実が想定よりも大幅に減ってしいました。早期着果調整のメリットもあるとはいえ、凍霜害のダメージを抑えるためには摘蕾や摘花は最低限にとどめ、結実がはっきりした段階で一気に摘果を進めるということが必要だと思いました。

桃の幼果(5/10)。例年だとこのぐらいの枝に3〜5つ程度は結実させて、予備摘花を行っています。


(2)凍霜害に遭った後、何度も人工授粉する

どれだけ効果があるかはケースバイケースだと思いますが、芽や花の段階で凍霜害に遭ったものは、雌しべが生きていれば人工授粉(毛ばたきなどで雌しべに花粉をつける作業)が有効とされています。

今回、当園では凍霜害に遭った花を見て、この方法が有効ととても信じられない状態でしたので採用していませんが、今後は周りの人の話を聞きながら、必要に応じて対応できるように準備しておいてもいいかな、と思っています。

りんごの花(4/25)。雌しべが褐変していて、結実は難しそう。


3 現時点での結実の見通し

当園でも先日の記事「桃の摘蕾、摘花作業が終わりました!」に記載したように、今年は比較的しっかりと摘蕾や摘花を行い、大玉・良品の生産を狙っていました(以下は今期の作業の順番と摘蕾摘花の程度)。

  • ワッサー(しっかり) → なつっこ(半分しっかり、半分甘め)→ 伊達白桃(半分甘め、半分摘蕾せず) → 黄金桃(甘め) ※ネクタリンは摘蕾せず

しかし、今回の凍霜害によって、結実が悪いため落とせる果実が随分と少なくなっていて、品種や場所によっては予備摘果をすっ飛ばし、本摘果まで完了したような状態になっていたり、枝によっては収穫後?のような状態のものも散見されます。

ただ、現時点では間違いなくダメになりそうな花・実もあれば、これから成長しそうな実もある状況でなんとも言えません。少ない経験のなか見立てがどれほど正確なのかは自信がなく、答え合わせはしばらく先ですが、どんな感触なのかを記しておきます。

  • ワッサー ・・・ 約6割(以下、前年比)
  • なつっこ ・・・ 約7割
  • 伊達白桃 ・・・ 約3割
  • 黄金桃  ・・・ 約7割
  • ネクタリン ・・ 約2割
  • プルーン ・・・ 約1.5倍(前年の方が結実が悪かった)
  • 小布施栗 ・・・ 約5割?(生育ステージ初期のためまだ分からず)
  • りんご  ・・・ 約3割?(果実が見えてこないのでなんともいえず)

また、今後、このいわば"霜摘果"が残った果実にどのように影響するのかはしっかりと観察していきたいと思いますが、次のようなことが考えられると思います。

  • 果実が狙ってたよりも大玉になる
  • 核割れ(タネと果肉の間にスキマができる)が助長される
  • 核割れにともない収穫前の生理落果が多くなる
  • 養分の持っていきどころが減るので枝葉が例年以上に繁茂する
  • 果実の表面が荒れる(いわゆる「サビ果」。りんご、ネクタリンのみ)

今回の経験を踏まえ、来シーズンは①ここぞというタイミングで燃焼法を取り入れること、②凍霜害の心配がなくなるまで摘蕾や摘花を最低限にとどめることにしたいと思います。

ただ、凍霜害の心配がなくなり結実がはっきりしてから「一気に摘果」を進めるためには、現状の1.5人体制では難しいので、来シーズンにはアルバイトやお手伝いの方をお願いすることも今から考えておきたいと思います。

プルーンの様子(5/10)。昨年の結実が悪すぎたこともあり、唯一生産量が増えそう。

昨年の今頃に多忙を極めた摘果作業はほぼ必要なくなってしまいましたが、収穫までには、仕上げ摘果、袋がけ、除袋、反射シートの設置、病気の枝の除去、そしてもちろんいつもの草刈りと消毒作業などがあります。

今回凍霜害に遭って精神的ダメージも幾分受けましたが、こうして記事をまとめながら「ないもの」「コントロールできないもの」に思考や感情を奪われていても仕方ないと思えるようになりました。今後は「あるもの」「コントロールできるもの」に意識を向け、今年もみなさまに美味しい桃をお届けできると信じ、これからの作業にも精一杯取り組んでいきたいと思います!


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