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2023年春の気候と霜害について

2023年春の気候と霜害について

プログレスファームの細野善寛です。

すでに6月に入り随分と前の話にも思われますが、自分自身のためにまとめておきたいと思います。

一昨年は霜害に遭い、収量・品質ともにさまざまな問題が生じましたが、今年も「早すぎる春」により霜害が発生したため、その記録のために記事にしておきます。

今年春の気温の推移

下のグラフのとおりですが、特に3月は月を通じて大幅な高温で推移しました。結果として、桃の開花は平年より10日から2週間程度も早くなりました。そして、開花後の気温は平年並み程度となり、"早く咲かされてしまった花"が朝の霜(低温)に遭遇し、霜害を受けました。

霜害遭遇日の気温の推移

前回2021年に霜害を受けた日の自宅観測点の気温の推移がわかっていたので、今年は翌朝の気温が低くなりそうな日は、気温の推移を過去のデータに重ね合わせながら、対策(後述します)に備えました。

以下の「2023/4/9」「2023/4/24」のデータが今年の霜害遭遇日の気温の推移です。

実施した霜害対策(燃焼法)

今年は春が早く、霜害の発生を心配していました。そこで、桃の結実の可能性をあげるため摘蕾は甘めとし、基本は「枝元1/3と枝先1/3だけ+枝中は若干」を落とすことにしました。

また、特に気温が下がった日(4/25の朝)は、経験的に特に気温が低くなりやすい園地で、「燃焼法」を実施しました。

燃焼法で準備した資材は以下(写真)の他、園地には事前に万が一の消火用に水バケツを用意しました。

燃焼資材は次の2つを用いました。

  • デュラフレーム(暖炉などで用いる人工的に木屑等をまとめて作った薪)・・・ダンボール紙の上に置いてそのまま点火。1火点1,000円程度。手軽だが高価。
  • キッチンペーパー半分+灯油1.5ℓ・・・ペール缶に入れて点火。1火点200円程度(ペール缶は5回程度使えるとして試算)。安価だが現場で時間がかかる。

燃焼の様子は次のとおりです。上がデュラフレーム、下がキッチンペーパー+灯油です。火の勢いは同等、燃焼時間もほぼ同じ(2.5時間程度)でした。灯油は最後まで世話要らずですが、デュラフレームは火の勢いを維持するため途中で突き崩す作業が必要です。

霜害対策の結果

燃焼法を実施した畑については、完全に十分な結実とは言えませんでしたが、ある程度の結実は確保できました。

しかし、燃焼法が結実確保の最大の要因ではない可能性があります。

というのも・・・

  • 燃焼法を実施し、十分な昇温が得られたものの、結実が不十分な畑があったこと。
  • 燃焼法を実施したにもかかわらず、マイナス3.5度程度まで気温が低下するなど十分な昇温に至らなかった"にもかかわらず"、ある程度の結実が確保できた畑があったこと。
  • 周囲の未対策の畑でも、ある程度着果が確保されていたこと。また、その未対策の畑では品種によって着果量が異なる状況であったこと。

という状況であったからです(説明が下手ですね・・)。

過去の研究などで温度も大きな要因であるのは間違いないのですが、品種(やその生育ステージ)によって霜害に対する感受性が大きく異なる可能性があると思いました。

所感など

ほんと、霜害対策は難しいです。

今回は燃焼法の効果を検証するため、いわゆる「防霜資材」は使いませんでしたが、来年以降は防霜資材との併用も検討して評価していきたいと思います。

なお、今回も実感しましたが、園地のちょっとした条件の違い(傾斜、風当たり、遮蔽物の有無など)によっても気温は違います。

ちょうど、5/9に農研機構から「(研究成果) 複雑な地形における日最低気温をピンポイントに推定」というプレスリリースが出ていました。プレスリリースの方法を使えば5mメッシュで最低気温を推定できるそうですが、裏を返せば、それほどまで局所的に最低気温は異なるということです。

実際に「なぜここだけ霜に遭った?」ということがよくありますが、昔の人は「霜道(しもみち)にあたってるんじゃない?」と言います。これが定量的・視覚的に表現できるのだとすると、大変な前進だと思います。

早く一般に利用できるようになることに期待です。

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