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2022年 りんご栽培を振り返って

2022年 りんご栽培を振り返って

2022年のりんご栽培は、遅霜も台風もなく、気候に恵まれ、収穫量もまずまずでした。

また、販売させて頂いたりんごに関してもご好評の声を多数いただき、無事にシーズンを締めくくれたと安堵していました。

しかし、当園では2023年はりんごの栽培を行わないと決めました。(もちろん、将来も栽培しないと決めた訳ではありません)

その理由は「秀品率」と「選択と集中」です。簡単ですが、自身の備忘も兼ねて振り返ります。

秀品率について

ある程度りんごの選果(せんか;果物の大小や良し悪しを基準に沿って仕分けること)の経験を積むと、「見た目も良く、美味しそうなもの」「見た目は悪いが、美味しそうなもの」に対して「美味しくなさそうな(そして実際に美味しくない)もの」が分かるようになります。いわゆる「農家の目利き」というものです。

様々な条件や栽培技術があるので、自分が当地のりんご栽培全体について述べるものではありませんが、当園では2022年の「恵まれた天候」であっても、りんご栽培は難しかった・・、というのが実感です。

2022年の当地最寄りの観測所「長野」における旬別の最低気温の平均値を平年値とともに示したグラフが以下です(太線が2022年、細線が平年値)。

※夜間の気温が高いほど可溶性固形分(いわゆるBrix;糖度)と果皮の赤色が減少するとされているので、最低気温の推移を見ることにしました。(参考1参考2

平年値と対比して上下がありますが、特に果実が肥大する期間は「ほぼ上振れ」です。グラフでは真夏をピークとする凸型ではなく、6月下旬から9月中旬まで20℃近辺で張り付いたような形なっているのが分かります。6月上旬、9月中旬、11月下旬がそれぞれ平年+4℃となっているのはかなりの上振れだと思います。

ハッキリと因果関係を述べられないのが農業の難しいところですが、そういう訳なのか、この辺りでは「いつまで収穫を待っても熟度が上がらない」「果皮の着色が十分でない」「蜜入りの割合が落ち込んだ」「糖度が低下した」「贈答用に使えるりんごが少なくて困っている」という“正直ベース”の話をあちこちで聞きました。

当園でも、残念ながら、選果していて「美味しくなさそうなもの」が想定より沢山できました。そして、それらは「ジャム用」として1kgあたり30円弱で加工屋さんに引き取ってもらいました。

このように足元で生産資材価格が音を立てて上がっている状況で、ジャム用を多く生産するようでは経営が成り立ちません。当園において秀品率の低いりんごの栽培は、今後より採算が合わなくなっていく可能性が高いと考え、今回の決断に至りました。

選択と集中について

当園のりんご栽培の面積は、当園の全耕作地の5%です。

作業時間の観点では、りんごの面積あたりの作業時間は他の品目(桃、栗)と比べてそれほど悪いものではありません。

そして、多品目を経験するからこそ理解できる各品目の特性もあり、りんご栽培によってりんごという果樹の理解だけでなく、他の果樹の理解促進に繋がったという面もあります。

また、年1回の果樹生産ですので、商品ラインナップにりんごがあることによって販売時期が伸び、「お客様の繋ぎ止め」になっていたという面もあるかと思います。

しかしそれでも、当園においてはこの「5%」が様々な面で効率を落としているように思われ、これを解消する必要があると考えました。

具体的には、りんご固有の観察眼や知識、作業(剪定や農薬散布など)、備品(コンテナ、鋏など)、資材(農薬、段ボール、トレイ、クッション材)、マニュアル、経理処理、営業、販売促進 etc...

そして、りんご作業に費やす時間や資金を他の品目の管理作業に充てれば、他の品目の品質をさらに向上させられるのでは・・という思いもあり、今回の決断に至りました。

今後の展望など

今は同じ「ふじ」でも果皮の色づきがよい系統の苗木も販売されており、こういった「ふじ」に植え替えることも、他の品種のりんごに植え替えることもできました。また、少ない栽培面積で効率よく収穫量を上げる生産方式(高密植矮化栽培)に切り替えることも考えられましたが、上記2点を根本的に解消するものではないと思われましたので、2023年のりんご栽培は行わず、りんごを皆伐することにしました。

そして、跡地には桃(ワッサー)を新植します。この園地では近隣でもよい品質の桃が栽培されていることから、適切に管理すればきっと良い品質の桃が栽培できると思われ、今からその生育が楽しみです。

当園のりんごをご愛顧いただきましたお客様には大変申し訳ありませんが、桃や栗の生産に一層注力してまいりますので、今回の決断についてどうかご理解いただき、今後とも応援いただけますとありがたく存じます。

※この記事には続編「りんごジュースを搾りました」があります。是非こちらもお読みください。


なお、りんごの皆伐においては多数の有志の方のご協力をいただきました。 また、伐採後のりんごの幹はほぼ全て薪として活用いただき、枝は炭化処理のうえ各方面で活用いただくこととなりました。伐採に関わってくださった皆様、ありがとうございました。

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